淡路島は、かつて神や天皇に食材を献上する『御食国』のひとつに数えられ、現在でも京阪神をカバーする一大農産地として有名です。
その背景にあるのは、ひとつは地理的要因です。気候は比較的温暖な瀬戸内海気候、土壌は水はけがいい土砂の堆積層。
これらは農作物栽培にとっては最高の条件で、多彩な農業が展開されています。春の玉ねぎ、夏の米、冬のレタス、という全国でも大変珍しい三毛作を可能にしています。
もうひとつは長年の研鑽と努力です。古来より食べ物の産地であって淡路島には、先人たちが苦労して積み上げた経験、作り上げた土壌があります。
悠久の時間の中で費やされた膨大なマンパワーの結晶が淡路島の農作物なんです。おいしくないわけありません。
私が耕しているこの吹上の畑は、かつて砂浜でした。
終戦直後、困窮を克服するため私の祖母が開墾し、田畑を造りました。
さて、皆さんはたまねぎの原産地をご存知でしょうか?実はエジプト周辺の砂漠地帯なんです。水捌けのいい砂質土壌とナイル川の湿度に拠ってたまねぎは産まれました。
では吹上浜の田畑はどうでしょうか。
砂浜上の田畑は砂質土壌、農作レベルでの排水性は抜群。一方で、島内でも稀な沖積地帯にあるので地下水面が高く常に適湿が保持される、という絶好の按配なんですね。
さらに、豊富な海のミネラルを含有した地下水は育成に非常に良い影響をもたらします。
これらが「淡路たまねぎの中でも吹上産は一味違う」と言われる由縁なのです。(参考:宮本芳太郎「淡路玉葱発達史」)